2つの観点から知る「家庭用エアコン(ルームエアコン)と
業務用エアコン(店舗用エアコン)の違い」
パッケージエアコンは、一般住宅や集合住宅などで使われる「家庭用エアコン(ルームエアコン)」と、オフィスや店舗などで使われる「業務用エアコン(店舗用エアコン)」の2つに分類されます。どちらのタイプも「空間を暖める/冷やす」ための機械であることには変わりませんが、その用途や稼働条件、掛かるコストには違いがあります。両者の違いをしっかり把握することが、最適な製品を選択する近道となります。
「家庭用エアコン」と「業務用エアコン」の違いは幾つかありますが、ここでは主に2つの観点からその違いを説明していきます。
「家庭用エアコン(ルームエアコン)」と
「業務用エアコン(店舗用エアコン)」の種類について
「家庭用エアコン(ルームエアコン)」はその名の通り、主に戸建て住宅やマンション、アパートといった集合住宅などで使用されるエアコンです。「業務用エアコン」は「店舗用エアコン」と呼称されるケースもあり、店舗やオフィスなどで使用されるエアコンです。
エアコンは室外機と室内機が連動して働くものですが、特に室内機は設置される場所に合わせて最適な形状を選べるよう、次のように分類されています。
【家庭用エアコン(ルームエアコン)室内機形状の種類】
- (1)壁掛型…壁に取り付けられるエアコン。最も一般的なタイプ
- (2)ハウジングエアコン…壁掛型以外の床置き型や天井埋込カセット型(2方向、1方向)エアコンの総称。少し変わった形で天袋埋込型もあります。
【業務用エアコン(店舗用エアコン)室内機形状の種類】
- (1)天井埋込カセット型(4方向、2方向、1方向)…天井に直接設置でき、温度ムラも少なく、店舗・オフィスなどで最も多く採用されるエアコン
- (2)天井埋込ビルトイン型、天井埋込ダクト型…天井内に設置しダクトという空気を送る管によって天井の複数個所から冷風・温風を吹き出すことができるエアコン
- (3)床置型…床に設置して冷暖房を行うエアコン
- (4)壁掛型…壁に取り付けるエアコン
- (5)天吊露出型…天井下に露出して取り付けるエアコン
業務用エアコンは設置する場所に適した形を選定して設置いたします。主な機種は以下の8種類になります。
メーカーによって室内機の形状に大きな違いはありませんが、どのメーカーも業務用エアコンの方がバリエーション豊富な点が特徴です。
業務用エアコンの形について、詳しく知りたい方はこちら
またこの他、商業施設や学校、病院などの大型ビルで採用される「ビル用マルチエアコン(ビル空調システム)」、工場などで使用される「設備用エアコン」などを総称して「パッケージエアコン」と呼びます。ビル用マルチエアコンは能力の大きい1台の室外機で複数の室内機を稼働させることができるので、広い面積、複数階をカバーすることが可能になっています。設備用エアコンの方は、床置型の業務用エアコンの大容量版と言えるもので、業務用よりも大きな空間、複数の空間に冷風・温風を送ることができます。また、温度・湿度を一定に保つ必要がある恒温恒湿室用、室内の清浄度を確保するクリーンルーム用、常時冷房が必要な電算室用など、様々な用途に応じた製品が存在します。大量の外気を導入するための直膨型外気処理空調機なども設備用エアコンの一種と言えるでしょう。
(1)能力の違い
「家庭用エアコン(ルームエアコン)」と「業務用エアコン(店舗用エアコン)」の最も顕著な違いは「能力」です。ここでいう能力とは「設定した室温にするために必要となるパワー」のことで、メーカーのWebサイトやカタログなどでは「kW(キロワット)」や「馬力」という単位で表示されています。
最も一般的な「家庭用エアコン」の場合、6畳用(冷房2.2kW,暖房2.5kW前後)から14畳用(冷房4.0kW,暖房5.0kW前後)といったサイズが主流です(ラインナップとしては29畳用くらいまで揃っています)。「業務用エアコン」は、家庭よりも広いオフィスや店舗などの空間を冷暖房の対象としているため、大きな能力のラインナップを揃えています。
「家庭用エアコン」も「業務用エアコン」も簡易的な容量算出のために対象となる空間の面積(m²)と単位面積当りの概略熱負荷(W/m²)(※)から算定した容量(W)でエアコンのスペックや種類を選定していくこととなりますが、「家庭用エアコン」は住宅で使用されることが多いので、ユーザーが機種を選ぶ時にイメージしやすいように「〇〇畳用」と表現しています。建物の状況(木造とコンクリート造、屋上階と中間階など)によって熱負荷は変わってきますので、あくまでも参考値として捉えてください。
※単位面積当りの概略熱負荷=空間の環境や広さに応じた必要となるエアコンの能力の目安を算定するための1m²当たりの熱負荷。
単位面積当りの概略熱負荷(W/m²)から機器容量を選定する場合、例えば100m²のオフィスでは面積当りの概略熱負荷が180W/m²とすると以下のような式となります。
100m²×180 W/m²=18,000W(=18.0kW)
つまりこのオフィスには18.0kW相当のエアコンが必要ということです。ただしこの数字はあくまでも目安です。同じ広さであっても人の出入りが多いオフィスとそうではないオフィスでは、外気が入り込むことが多い前者の方が能力の高いエアコンが必要となりますし、常時滞在する人数や照明の数の違いによっても単位面積当りの概略熱負荷は変わってきます。同様に広さや人の出入りに大差はないとしても、火の取り扱いのある飲食店とそうではない場所ではエアコンの効き目は変わってきます。このように、単純な広さだけではなく空間の使用用途や条件によっても選ぶべき業務用エアコンは変わってくるので、実際に業務用エアコンを選定する際にはしっかりとした下調べが必要です。場合によっては専門家に相談してみるのも良いでしょう。
参考)業務用エアコン3つの選び方:https://kucho-ex.com/howto/
(2)施工方法・仕様の違い
もう一つの違いが「施工方法」と「機器の仕様」です。
ご自宅のエアコンを見てみるとわかるように、「家庭用エアコン(ルームエアコン)」は部屋に備え付けのコンセントに接続して稼働しています。したがって新たに買い替える際には室内機と室外機を入れ替えればよく、一般的には特別な工事は発生しません。一方の「業務用エアコン(店舗用エアコン)」は、中には家庭用同様に室内機と室外機入れ替えだけで済むものはありますが、多くの場合壁内や天井内への埋込工事、配管の溶接、電源の接続など、様々な工事が必要となります。設置する機種や建物の状態によって異なるため一概には言えないものの、こうした工事には数十万円〜百万円ほどの費用が掛かる場合があるので、事前の検討が大切です。
「家庭用エアコン」と「業務用エアコン」では機器の仕様も違います。例えば室内機と室外機をつなぐ冷媒配管というパイプの長さの限界は倍程度違うことがあります。「業務用エアコン」に比べて冷媒配管が短い「家庭用エアコン」では、室外機と室内機の距離が離れすぎていると能力低下や不具合の原因になってしまうので空調機メーカーは冷媒配管の最長距離を定めています。工事を検討する際には注意が必要です。
また、「家庭用エアコン」には、人を感知して運転を制御したり、自動でフィルターやフィンを清掃したり、ユーザーのための機能が多くついている機種があります。対して業務用エアコンは冷やす/温める機能がベースで、家庭用のような便利機能はほとんど付いていませんでした。ただし近年では、ユーザビリティを考慮した機能が付いている「業務用エアコン」も増えてきています。
今回見てきたように、エアコンは文字通りその空間の“空気”を決める重要な存在です。万が一環境に合わないエアコンを選んでしまうと、快適な空調環境を提供できず、従業員や顧客からの評判を下げてしまう可能性もあります。そのような事態に陥らないためにも、パッケージエアコンを選択する際にはしっかりと吟味し、プロの力も積極的に借りることをオススメします。